市場調査の中でも、競合企業に関するニーズは多く、これがメインな調査会社も多いのが実態です。
どういう調査の種類があり、どうやって調べていくのか、まとめていきたいと思います。
1.競合企業調査の種類、内容について
調査の種類や内容について
競合企業の調査は、自社でするにしても外部に委託するにしても、どの会社でも必ずやっていることです。
簡単に言えば、「自分のビジネスと他社のビジネスを比較する」ということですが、その項目は多岐に及びます。
例を挙げると、主なものだけでも下の通りです。
- 売上と販売カテゴリーや商品チャンネルの販売区分ごとの販売比較
- 原価構成、売上、収益項目を比較しての原価構成比較
- 組織体制及び人員配置を比較した組織体制比較
- 人事考課や給料体験などを比較した給料体系比較
- 商品研究開発体制を比較した研究開発比較
- 海外事業展開やそこに投入する投入資金などを比較した海外事業比較
- 広告宣伝媒体別予算やその人的リソースの比較した広告宣伝比較
スパイではない
上記のような内容を書くと、「それはスパイの領域ではないのか」と思う人も多いと思います。
そのような非合法的な話をこのサイトでしようとは思っていません。
非合法的なやり方は、継続不可能なだけではなく、自身のビジネスを駄目にします。
自社との比較材料
マーケティングリサーチの本来の目的は、自社の事業を成長させるため。
調査をすることが目的となってしまい、ヒアリング難易度が高い内容を調べることを目的とする人がいますが、
「自社と比較して、こういう情報が欲しい」という調査目的は見失わないようにしましょう。
比較以外の目的(ライバルではないカテゴリー外の理想を探せば、新規アイデアの参考になる)
そもそも「競合企業をどこに置くか」という問題ですが、これは必ずしも商品やエリアが完全に競合する企業でなくてもいいです。
ちょっと気になる、ちょっと似ている事業を行う会社を調べたり対象とするだけでも、既存のビジネスの成長にプラスになるケースはたくさんあります。
例えば、私が担当したとある化粧品会社が、社会貢献活動をどうしたいか考えたときに参考にしたのは、大手の食品や電気メーカーでした。
また異業種調査は新規参入や事業拡大という観点では、他業種や他のカテゴリーがライバルとなります。
2.競合企業調査の調査の流れについて
他の調査に比べて情報収集の部分が特に苦労すると思います。情報収集のポイントや注意点なども合わせて解説します。
仮説
調査や取材の流れによっては繰り返しできない部分もあるので、仮説や計画である程度固めていく必要があります。
とても大切なステップとなります。
情報収集
他の調査と比べて情報収集の情報収集の面が難しく、情報漏洩などを含めて気を使わなければなりません。
情報整理
他の調査と比べてあまり差はありませんが、自社との比較がレポートを作成する上でとても重要となります。
アウトプット
調査目的を裏付けるようにレポートを作成していきます。
表現方法は自社と競合との比較がメインですが、競合の独自性などについても触れていく必要があります。
3.競合企業調査の仮説、計画の立て方について
競合を調べると言っても色々な調査目的があり、そのために色々な計画を立てなければなりません。
今回はその辺りについてまとめていきたいと思います。
調査の目的
調査の目的をまず明確にします。
例えば
- 販売先でのシェアが取られているのでシェア獲得の戦略
- 商品が競合の方が高評価なのでどこが優れているかなどの商品戦略
- 自社の給料が高すぎるので競合と比べて高いか安いかなどを調べるための給料戦略
様々な例が考えられます
調査項目の設計に関わりますので目的を明確にしましょう。
プレリサーチ
まず対象先や調査目的を絞るために、ネットなどで軽くリサーチしておきましょう。
仮説の立て方
軽く目的と状況を把握したところで調査結果について軽く予想します。
こうすることで調査項目が立てやすくなります。
計画の立て方
調査の目的と仮説まで立てところで調査項目を作っていき調査計画を立てます。
4.競合企業調査の情報の集め方について
競合企業は、ライバル的存在です。
そのライバルに、やすやすとデータを渡す会社や相手はいません。
どうやったら、少しでも多く競合企業から情報が取れるか、その方法について経験をもとに話していきたいと思います。
オープン情報
正直、競合企業に直接取材をしたり、競合企業に関する詳細な情報収集は、他の市場調査に比べて困難で、難易度が高いです。
そのため、競合企業に直接取材を行う機会があったとしても、その機会を無駄にしないようにネットに出ている情報や一般的によく知られている新聞記事などの情報は把握しておきたいものです。
最低限抑えておきたいのが、調査内容によりますが、以下のような内容です。
- 対象企業のホームページ
- 新聞や教科書などの記事検索
- EDINETなどの公的な情報公開
- 帝国データバンクなどの基本的な会社情報
これらを踏まえた上で、取材などのクローズドな情報取集をしていくのが一番効率的です。
また、競合でなくても、同じ業界の参入企業の情報なども、取材時などの情報交換などの際に有効活用できますので集めたほうがいいと思います。(というのも競合企業に自社の情報を与えてバーター的に情報を集めては、自社の情報漏洩となるので、第三者の情報でバーター取引するのが理想ですね)
クローズド情報
情報の出所というのは強力な説得力を持ちます。
ライバル企業から直接、収集した情報が一番強力です。
ただ、不正競争防止法などの法律に引っかからない合法的な方法(正攻法)で情報収集を行えば、聞き方によっては、全く教えてくれないということにもなるでしょう。
ただ、そんな時でも、情報の内容によっては「相手が答えない」であったり「相手の表情が曇る」であったりその状況だけでも強力な情報になったりします。
調査の目的や状況次第ですが、競合相手に直接アプローチして情報を入手できれば理想的ですが、それ以外の相手の反応なども集めるようにしましょう!
直接、競合企業に聞かない情報収集の仕方
ライバル企業に直接情報収集をしても教えてくれない可能性もあります。
しかも、そもそも本当の事を言ってくれる可能性も低いです。(そう考えておいた方がいいです)
そう考えるとライバル企業から直接ではなく、その他の企業から情報を収集する方法を考える必要があります。(これは競合企業から取れた情報の裏をとるというような意味もあります)
一般的な方法は関係各社・各位にあたるということです。
例えば一般的な消費者に商品を売っているメーカーを想像してください。
(あくまで一般的な例として、とあるメーカーの昔の一般情報を例示します。)
上の図の様に、商品を製造するメーカーから一般の消費者にを手に渡るまでの間に複数の企業を経由します。
これら企業に情報や状況を聞くのも有効な手です。
上の図の赤色部分はメーカーから直接営業を受け、販売量も多い1次卸なのでメーカーの動きや営業体制・販売価格やリベート、販促キャンペーンなど様々な情報が手に入ります。
また、オレンジ色の部分では、一般消費者に近いので、消費者の好みやターゲット分布、販売チャネル別の売上構成などの情報が手に入ります。
また、物流業者や外部生産工場などにも競合企業の情報を聞けば、その他の周辺情報も揃います。
全く情報がない場合
調査の内容によっては全く情報が出てこないことがあります。
このサイトでは「一人でできるマーケティングリサーチ」という形で構成して、残念ながら、この競合企業の取材というのは他の会社の人に頼るのが一番効率的です。
その理由は、競合ではなく第三者であれば普通に喋れる内容もあるからです。
例えば、不正競争防止法に違反するような情報であっても、その相手が新聞社であったり利害関係者でない場合は罪に問われないケースもあるように、情報を渡す相手が誰かによって相手のしゃべりやすさも変わってきます。
色々な角度で情報収集をしていきたいものです。
5.競合企業調査の情報整理・分析について
競合調査での情報整理の仕方や分析について、気になる点をまとめたいと思います。
公表情報との比較
探していたデータや統計などから割り出したデータが有価証券報告書が帝国データバンクの会社情報などの公表されているデータと比較して遜色(違和感)がないか確認します。
これらの確認作業はとても大事です。
競合とはいえ、市場調査の一環なので、みんなが知っている公表データを確認することは、情報の信頼度を上げる上で大切になってきます。
市場調査の会社のレポートでは、あまり書きませんが社内のレポートとしてはこれらのデータと比較検証した事を書いた方がいと思います。
逆に、書いてないと上司から確認したか?と言われる可能性が高いです。
(たまに、集めた情報と公表データが異なる場合があります。その場合はそのまま、2つのでデータを情報収集の流れとともに記載します。競合企業が業績をよく見せるための粉飾などが分かるケースがあります。)
調査レポート内での整合性の確認
調査レポート内での整合性の確認を行います。
調査でありがちなのが、調査レポートの中に出てくる数字が前後で異なる場合です。
これは単なる確認ミスが多いのですが、注意してチェックしましょう。
ストーリー・文脈の流れもチェックしましょう。
ある事業を拡大と書いてあるのに、別ページやグラフでは横ばいというような感じです。
6.競合企業調査の表現方法について
競合企業調査の表現方法についてまとめます。
基本的には、その他の市場調査と大きな差はありませんが、競合調査特有の表現方法もあるので紹介していきたいと思います。
自社と競合との比較が一番重要
調査目的が自社の業績アップや改善などであり、目的を考えると「競合企業を調べて自社と比較してどうだったか」ということが一番大切になります。
そのため可能であれば、ほとんど全ての表現に自社の数字や状態を盛り込んで比較をすべきです。
例えば、売上の構成であったり、組織体制であったり、自社の売上情報と比較することで違いが明確になり何をどうすべきかが明確になります。
文章
レポートの表記を、競合の企業名などをイニシャルなどの伏字にしといた方が流出時のリスク管理がいいと思います。
数値
数値については、通常の市場調査とあまり差はありません。
ただ自社の実績数値との比較がとても大切になります。
例えば、下の競合とのコスト構造(損益計算書)比較をご覧ください。
競合と比較して、営業利益率はいいものの、納品物流費が高い、販管費の人件費が高いなどの問題点が分かります。
この要因として、考えられる理由をセットで記載すると説得力が出てきますね。
(物流費が高い→直送率が低い、人件費が高い→平均年齢が高いなど)
グラフ
自社と他社を比較する際の一番わかりやすいのが、表やグラフなどです。
グラフは「何がいいたいか」によって使い分けが大切です。
例えば次のグラフをご覧ください。
このグラフでは、長期的に市場は縮小傾向にある中で、ライバルA社のシェアを自社が奪い取ってきた図になります。
これを売上ではなく、シェア(%)の推移で書くともっと分かりやすい図になりますが、一般的に売上ではなくシェアだけを記載するケースは珍しく、見る人が違和感を感じると思うので、こういう見せ方の方がいいと思います。
出所
これはレポートによりますが、通常秘匿性の高い情報の場合、ぼかして書く場合が多いです。
私も競合調査をしている時によく「どの部署の誰に聞いた?」とか「聞いた人の名刺を見せて欲しい」とよく言われましたが、相手先との関係のことを考えて、話さない場合も多かったです。
よく新聞やニュースの「政府高官の話」とかもそういう理由だと思います。
データソースの表記は、データの内容を判断するのに十分な内容が大まかに分かれば問題なく、今後も継続して情報が取れるのであればその情報を守る必要もあります。
7.競合企業調査の注意点について
競合企業調査についての注意点をまとめていきたいと思います
時間・締め切り
他の調査と同様に締め切りがあり、時間厳守が大切になります。
特に競合調査というのは、調査対象が明確に見えていて情報が取れそうだけど取れないという状態なので、「あともう少し、あともう少し」伸ばしがちです。
本来の調査目的を忘れてはいけません。
客観性・説得力
調査担当者の所感や肌感はとても大切なものですが、それはあくまでも様々な情報を裏付けたり、方向づけたりするものであって、それがメインではありません。
あくまでも調査なので客観的な情報を中心に書いてきましょう。
帝国データバンクの情報会社の利用時の注意点
帝国データバンクなど、競合調査では様々な調査会社が扱う企業情報を取り扱うと思います。
東京商工、帝国データなどでは金融機関から情報とっており、そういった面である程度の信頼性がおけると思います。
ただ、あくまで金融機関から情報を得るのは財務情報だけと思った方がいいと思います。
上場してない会社では、基本的に第三者に対して本当の情報を開示する義務がないのです。
公開されてる情報が嘘でないとしても、更新されていなかったり最新の情報でなかったりするので注意しましょう。
詳しくは「帝国データバンクの企業情報の入手法、利用法について」もご覧ください。
不正競争防止法違反などに注意
そして競合調査では特に不正競争防止法の情報提供に当たるかどうかなど法に触れるかどうか、というのは重要になります。
非合法の手段しか情報が入手できない場合もありますが、非合法な方法で情報を得た場合は社会的制裁が科されるという結末になります。
そもそも調査目的から考えて非合法である必要はなく、集まってきた情報組み合わせは答えが出るパターンも多いです。
情報収集はとても大変だと思いますが、調査目的を見失わないように頑張りましょう。