8.レポート作成と表現方法について~市場調査入門~

今回は、レポート作成と表現方法についてまとめていきたいと思います。

市場調査には、そのデータを見たり読んだりする人間がいます。

その人によってデータの捉え方が異なり、データの作成・表現方法により伝えたい内容が変化するという意味でとても大事になります。

色々な作成・表現方法を紹介していきますが、これが正解といった答えはありません。試行錯誤をして進めていきましょう!

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情報をレポートや報告書にまとめる意味

状況によっては口頭のみという形もありえますが、社内では、多くの場合上司やその上司など多の人が見るケースが多いです。そのため、誰でも読めるレポートや報告書の体裁が必要となります。

このレポートが一人歩きするという形になります。

そのため、多くの人がわかりやすく誤解のないように伝えるレポートにするためのテクニックをこれから紹介していきます。

調査概要~定義と計算方法について~

通常、調査レポートには調査概要があります。

これには、主に次のような内容が書いています。

  • 調査担当者名、部署名
  • 調査期間
  • 対象商品・サービスの定義
  • 対象範囲(サンプル件数、流通フローの中での対象・対象外など)
  • 集計方法

その資料が、どこからどこまでの範囲で、どういった方法で計算しているかによって、数字や内容は全く違った意味を持ちます。

誰もが当たり前と思っている言葉でも、人によって受け取り方が異なる場合が多いです。

少しくどくなっても「今回の調査では、この商品はどういった商品を指す」など説明が必ずあった方がいいでしょう。

目次と合紙

初めに必ず目次、途中のきりのいい切れ目に合紙(あいし、ごうし)が入ることにより、メリハリのあるレポートになります。

目次の例

合紙の例

サマリー

調査規模によりますが、多くの場合、数枚程度に調査結果をまとめたサマリーを用意します。

私の経験上でも、多ければ、レポートは数千枚になったりします。

社長などのえらい方に、数千枚も読めという訳にもいかないので、結果だけを端的に書いたものを用意する訳です。

個別表現~文章~

まず最低限を抑えたいのが誤字・脱字がないという点です。

これは「誤字脱字のチェックもできていないはレポートが信用性がなく、他の数字も間違っているんじゃないか?」と思われるからです。

最低限、誤字脱字のチェックは習慣づけましょう。

私もよくこのチェックを忘れるので、相手は誰でもいいので、第三者に読んでもらうようにしています。

また、一般的に丁寧語、「です・ます」の表現は使わず、「~である」「~とみられる」「~としている」などの表現が用いられます。

個人的には、社内文化などもあり、どれが正しいとはいいがたいと思いますが、ただ、統一感のある表現の方が読みやすいとは思います。

個別表現~ 数値、表~

数値の表現として、暗黙の了解として1,000円単位(千、百万・・・)という形になります。

万や億という区切りではないので、初めは慣れないかもしれませんね。

また、数値の単位も必ず書かなくてはなりません。

通貨なら円、ドル、ユーロなど、数量なら、個、台数など。

また、シェアや比率などは何が100%となるのか分かりやすく書く必要があります。

前年比と増減率についても、混合しないよう気をつけましょう。(数量が10個が翌年15個になれば、前年比150%、増減率50%という感じです)

数値、表の例

個別表現~ グラフ~

グラフの種類や並べ方などで、そのデータは大きく違って見えます。

意図的に内容を変えることもできますが、わざとらしく見せると信用性がなくなるので注意しましょう。

グラフの例

例えば、上の表をグラフにした下の2つのグラフを見比べてみてください。

  • 市場の動きを見せたくないなら上のグラフ
  • 市場の動きを見せたいなら下のグラフ

となります。

(グラフの単位をデータの範囲に寄せて折れ線を使うと動きだけが分かりやすくなるからです)

個別表現~ 図形(フローチャートや地図など)~

エリア戦略の調査であれば、下の様に対象地域の地図に内容を書いていくなども効果的です。

個別表現~ 出所、引用~

市場調査に引用はつきものです。

引用する目的は、ストーリーの補強ですが、著作権法などの法的な理由により必要です。

著作権についての表記はとても長くなるので、別の機会に改め、概略の説明にとどめますが、面倒と思わず、説得力が増すとプラスの考えで取り組んだ方がいいと思います。

出所表記の方法

出所の表現は大学での論文等と同じです。例えば、表や文章の下に次のように書きます。

引用における注意事項
 他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)

文化庁.”著作物が自由に使える場合”.https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html.(2021.12.25)

ウエブサイトサイトなら

著者名.“ウェブページの題名”.ウェブサイトの名称.更新日付.入手先(URL),(入手日付).

で、書籍なら

著者名.論文名. 誌名.出版年,巻数(号数),ページ.

などの表記などです。

出所を明示することが目的であり、法的なルールは厳密にはなさそうですが、出来れば、レポートを読んだ人間が、データソースにたどり着ける形が望ましいですね。

レポートのチェック方法

位置のズレを確認する

特にパワーポイントなどで文章は図が上下左右でズレてませんか?

私もこの手のチェックは面倒に感じ、内容の問題では?と言いたくなるのですが、

読み手でこのズレがきになる人は多く、特にチェックやミスを指摘するのが仕事だと思っている上司タイプは言ってくるので確認しておいた方がいいです。

サマリーで流れ・ストーリーをチェックする

私もよく失敗しますが、レポートを作りサマリーを作って完成!

と安心して、ほかの人に見られて「結局何がいいたいの?」ということに。

何が言いたいかわかりにくい理由は経験上、

  1. 情報が薄い
  2. 表現・文章がわかりにくい
  3. 個別のパートのまとまりが悪い
  4. 全体の流れが悪いスムーズではない

などかなと思います。

情報の濃い薄いは内容にもよるので、どうしようもないとしても、

その他の箇所は、特にサマリーを読めばチェックしやすいです。

サマリーが個々の内容を端的に表現しているかをチェックし、サマリーを読んで全体の流れをみる。

個別のパートは量が多くて、全体の流れは作っている側は特に分かりづらいモノです。

サマリーからチェックをすると分かりやすくなります。

他人に読んでもらう

これが一番早いです。

専門用語を使いすぎてないか?

文脈はおかしくないか?

恥ずかしい気持ちは抑えて、見てもらいましょう。格段によくなりますよ!

主な調査項目とレポートすべき内容や表現方法の例

表現方法は様々ですが、市場規模シェア調査の例で、調査項目と内容と表現方法は次のようなケースが多いと思います

項目内容表現
表紙、目次、調査概要、合紙 表紙、目次、調査概要、合紙 エクセル、パワーポイントなど、文章のみ
サマリー市場全体の図式表現、市場規模の定量的表現、
種類別規模の定量的表現、メーカー別シェアの定量的表現
パワーポイント 全10枚程度に要約
グラフ・図を使った分かりやすい表現
市場概要

商品・技術の定義と説明、参入企業の増減と理由、商品の増減と理由、
市場全体の増減と個別商品群の増減と理由、
今後の参入企業数の増減・理由、今後の市場の有望度
グラフ・図を使った分かりやすい表現
製品一覧・特徴:
仕様比較、技術比較
製品一覧・特徴:
仕様比較、技術比較
表やチャート
市場規模推移・市場予測
5年間の数量・金額推移、伸長率、増減の理由、
競合商品群に対する強み、弱み、今後の予測の根拠
表・グラフ表現
メーカー別シェア数量・金額、メーカー別の特徴、メーカー間の強弱の理由 表・グラフ表現
用途動向数量・金額、用途別規模の大小の根拠、理由、今後の用途別規模の増減と理由、
今後代替される用途と新しく成長する用途
表・グラフ表現
販売方法・販売ルート現状での販売方法、直販・代理店・OEMの比率、
主要納入先・代理店名・OEM先の固有名詞、
代理店のコメント、代理店の特徴(業種・規模・他の扱い商品)、今後の販売方法(拠点拡大、代理店拡大)の考え方
表・グラフ・フローチャート
価格動向標準価格(カタログ、WEB,ニュースリリースより)
単体の価格、付属品込み価格、設備費込み価格、
工事費込み価格を明確に、1~2年前の価格水準と今、
今後の価格水準のコメントとその根拠
表、グラフ
技術動向現在の主要な技術と技術別・企業別製品区分、その技術の強み・弱み、今後主流となる技術とその理由文章、写真、図
他企業・団体との提携状況販売提携企業・団体、技術提携企業・団体、提携の理由とメリットデメリット、提携の内容、提携の理由とメリット・デメリット関係図、文章
現状の問題点現状での販売上の問題点、技術上の問題点、
製品的問題点、その他需要拡大の阻害要因
文章
今後の方向性市場を取り巻く制度環境(法的規制、緩和、法律制定、補助・助成金・助成策等)の変化の有無、
外的・社会的環境(市場を拡大・縮小させる環境要因)、
競合技術の変化と当該市場との相関性
文章やフロー図
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