海外の企業、マーケットを調べる調査についてまとめます。
基本的には、対象が海外にあるというだけで日本国内の市場調査大きな違いはありません。
1.海外調査の種類、内容
市場規模シェア調査
海外市場の国、エリアにおける市場規模やシェアを調べる調査です。
地域によっては、国の統計または企業の情報がないパターンが多く、基礎データの収集から時間がかかる形になります。
消費者アンケート調査
消費者や中間企業に対するユーザーの調査、意識調査などを行います。
国内から海外のエリアへ販売したい場合の調査が多いです。
日本国内と違い文化や通貨の認識なども異なり、ユーザーの特性が日本とは大きく異なる為、調査が避けられないですね。
競合企業調査
海外に本拠地のある企業の調査をする、またはそのエリアに進出している企業を調査するパターンが多いです。
企業の外観を写真を撮ったり、インタビューの電話をするだけで、スパイ行為とみなされる国も多く、注意が必要な場合もあります。
その他の調査パターン
上記以外にも海外調査は様々なパターンがあります。
例えば、決算発表用に、海外の有名企業Google や Facebook、Appleと比較したデータを使う会社も多いです。
また、これからヒットする商品について海外での展開状況などを見て、日本でもヒットするかどうかなどを予測する調査もあります。
2.海外調査の調査の流れ
海外の市場調査の流れについて説明します。
他の調査に比べて、繰り返しや追加で調査が難しい面もあるので、計画や前段階でしっかりと入念にチェックしたいですね。
仮説
仮説の段階では、国内の調査に比べ、少し幅広く、悪く言えば曖昧に仮設を立てた方がいいです。
それは、国内よりも海外のほうが情報が取りにくく、絞りすぎると情報が全く取れないケースもあるからです。
仮説の立て方自体は国内と同様です。
情報収集
まず、国内外のWeb サイトや検索サイトを使います。
不慣れな言語の場合は翻訳サイトなども利用します。
海外のデータベースを使う場合もあったり、一人で無理な範囲は海外の業者に発注なども行います。
翻訳サイトについて
翻訳サイトって「Google 翻訳」の事でしょ?と思っている方も多いと思いますが、個人的には「DeepL翻訳」をオススメしています。
人から教えてもらってこのサイトを初めて使った時は衝撃的でした!
例えば下のアメリカ労働局のプレス発表を2つのサイトで翻訳した結果を見てもらえれば、分かりやすいと思います。
Googleは原文と比較して読んで意味が分かる程度、DeepL翻訳はそのままレポートにコピペできるんじゃないかと思う程の出来です。
By age, usual weekly earnings were highest for men ages 35 to 64: median weekly earnings were $1,232 for men ages 35 to 44, $1,260 for men ages 45 to 54, and $1,311 for men ages 55 to 64. Among women, usual weekly earnings were also highest for workers ages 35 to 64: median weekly earnings were $1,003 for women ages 35 to 44, $1,035 for women ages 45 to 54, and $994 for women ages 55 to 64. Men and women ages 16 to 24 had the lowest median weekly earnings, $662 and $623, respectively. Men’s and women’s earnings were closer among younger workers than older workers; for example, women ages 16 to 24 earned 94.1 percent as much as men in the same age group, while the women’s-to-men’s earnings ratio was 76.9 percent for those age 55 and over. (See table 3.)
アメリカ労働統計局 –U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS)USUAL WEEKLY EARNINGS OF WAGE AND SALARY WORKERS FOURTH QUARTER 2021より
Google 翻訳(翻訳をコピペしてそのまま載せてます)
年齢別では、通常の週収は35〜64歳の男性で最も高かった。週収の中央値は35〜44歳の男性で1,232ドル、45〜54歳の男性で1,260ドル、55〜64歳の男性で1,311ドルでした。女性の場合、通常の週収は35〜64歳の労働者でも最高でした。週収の中央値は35〜44歳の女性で1,003ドル、45〜54歳の女性で1,035ドル、55〜64歳の女性で994ドルでした。16〜24歳の男性と女性の中央値が最低でした。週収はそれぞれ662ドルと623ドル。男性と女性の収入は、年配の労働者よりも若い労働者の方が近かった。たとえば、16〜24歳の女性は、同じ年齢層の男性の94.1%を稼いでいますが、55歳以上の女性の男性に対する収入の比率は76.9%でした。 (表3を参照してください。)
DeepL翻訳 (翻訳をコピペしてそのまま載せてます)
年齢別では、35歳から64歳の男性の週間収入が最も高く、35歳から44歳の男性の週間収入中央値は1,232ドル、45歳から54歳の男性は1,260ドル、55歳から64歳の男性は1,311ドルであった。女性では、35歳から64歳の労働者の週当たり収入が最も高く、週当たり収入の中央値は、35歳から44歳の女性で1,003ドル、45歳から54歳の女性で1,035ドル、55歳から64歳の女性で994ドルであった。16歳から24歳の男性と女性の週給の中央値は最も低く、それぞれ662ドルと623ドルであった。男女の所得は、高齢者よりも若年労働者の方が接近していた。例えば、16歳から24歳の女性は同年齢の男性の94.1%の所得を得たのに対し、55歳以上では女性対男性の所得比率は76.9%であった。(表3参照)。
情報整理
情報整理を行います。
特に海外の文化や通貨など、国内と国外で比較し、細かく背景を説明して、読み手の文化圏の人に分かりやすく表現します。
国の違いを除いては、情報整理の方法も国内と同じです。
アウトプット・表現方法
国内との大きな違いは、通貨・単位などを現地単位と国内単位の2つの併記が必要だという事です。
大部分は国内と同じです。
3.海外調査の仮説の立て方
どの調査でも大事な仮説の立て方についてまとめていきたいと思います。
海外調査では、国内に比べて難易度や費用が高くなり、仮説の重要性が高まります。
調査の目的
海外調査の多くは、「調査してみるまで結果がほとんど予測できない」ことが多いです
そのため、調査目的として「この辺りまで知りたい」という目標を立てると思いますが、その目標の立て方が国内よりは浅く、「この深さまで分からなかったら、こっちを調べる」というな感じて調べた方が無難です。
プレリサーチ
プレリサーチというよりは、国内で調べれる所は、仮説・調査計画を立てる段階である程度調べておいた方が楽です。
インターネットでできるデスクサーチできるところは、しといた方が後の調査が楽になっていきます。
国内に比べて割高なのでプレリサーチが重要
他の調査に比べて仮設や計画の段階の調査をしっかりしておいた方がいいと思います。
これは、海外・現地とのコネクションがある場合はここまで細かく予定などを立てなくてもいいと思います。
しかし、現地にコレクションがない場合は海外調査を依頼したり、現地に赴いて調査したりするなど、海外調査は割高となるため、初めに集めれる情報を集めて、どこに行かなければいけないか、どういった工程を踏まなければいけないか、という調査工程に直結する部分は固めなくてはいけないからです。
調査で明らかにできる範囲を明確にすることが大切
他の調査に比べて、調査の途中で「こっちも調べた方がいい」とか「実はこうだったのか」と調査の軸を修正したくなりがちなのが海外調査です。
しかし、海外調査は費用や時間がかかることが多く、一旦調査をスタートしてしまえば、その調査の軸でとりあえず進めていった方がいいです。
どうしても、修正調査が必要であれば別調査という形で、依頼できるもしくは実施できる形を考えながら進めていく方がいいです。(でないと、調査したけど何も成果がでないことになってしまいます)
調査で困ったことや苦労したこともポイント
プレリサーチを含め、仮説や調査の過程段階で調べたことをまとめるのはもちろん、その調査の工程でどういう困難・問題があったかを書いておくのも、現地の国独特の事情を知る上でとても良いレポートになります。
4.海外調査の情報の集め方
基本的な考えは国内と同じですが、海外特有の問題もあります。
オープン情報
オープン情報の収集にはインターネットが一番便利です。
基本的には、国内の情報収集と同じですが、翻訳サイトを組み合わせて、苦手な言語でも幅広く情報を集めるようにしましょう。
特に、気をつけたいのは「英語による情報収集だけで終わらせようとしない」ということです。
例えば、イタリアの情報を集めるのに英語だけではなかなか集まりません。
翻訳サイトは結構各国の言語に対応してます。イタリア語などの現地の言語での、情報収集を必ず行うようにしましょう!
外国書籍も便利
またインターネットだけでなく外国書籍の購入が Amazon などで簡単に行えるので、外国書籍を購入して読むというのも良い手だと思います。
外国書籍については、日本の図書館でも手に入るものは少なく、買った方がいいケースが多いようです。
クローズド情報
非公開のクローズドな情報については、国内で情報収集するのは難しく、残念ながら、海外に電話したり、直接いけないのであれば、このあたりは一人でできない部分も多いと思います。
この辺りは調べたい対象の国の人に協力を仰ぐのが一番いいと思います。
現地の調査会社でもいいですし、私は、通訳の知り合いとかを使ったりしてます(通訳は調査のプロではないですが、人脈が広く何より言語・コミュニケーションのプロなので調査能力高い人多いですよ)
現地の人・組織を使う理由としては、国内からのアプローチでは時間とお金がかかるという点、
また、スパイ活動などの疑い・問題が発生するなどの点で現地の人に協力してもらうのが一番スムーズかと思います。
全く情報がない場合
海外の調査をしている場合オープンやクローズのを含め情報が全く出てこない場合があります。
これは国内でも同じことなのですが、海外の場合は全く情報が出てこない場合の頻度が多いです。
その場合は、同じような商品であったり、その周辺国など同じ文化圏の情報を集めるなどして類似のデータを作るようにしましょう。
統計がない場合も
また、根本的なデータの一つである統計がなかったり、統計が全く信用できない国も多いです。
この辺りは、その国の統計を利用するよりは日本国政府が発表しているその国の統計の方がいいかもしれません。
5.海外調査の表現方法
表現方法の基本的な部分は国内と海外で大きな差はありません。
細かいところが異なるので、違いについてまとめていきたいと思います。
文章
文章表現につい、基本的な部分は国内と同じですが、国内と海外現地との比較について書くと読み手は分かりやすいと思います。
海外と日本ではどう違い、それはどういう背景によるものか、などの説明です。
例えば、文化や習慣、宗教等です。
数値
数値については現地の取材時の表記と日本の表記を両方並べた方が分かりやすいと思います。
例えばガロンとリットルなど。
グラフ
グラフについても、海外調査の場合、現地の数値表現のグラフと日本の単位での数値評価をした場合のグラフと二通りで表記することが多いです。
例えば売上高がドルであれば、円ベースでどういう形になるかという場合です。
出所
出社の表現は原則日本と同じ形で大きな問題はないと思います。
無理やり日本語に変換しなくてなくても現地の言語での出所表記で問題はないと思います。
通貨、為替
海外調査で一番問題になってくるのが為替の問題です。
その為替を円に戻したのか、元々円のデータなのか、ちゃんと明記しなくてはなりません。
この円換算は、決算書などでは決算日レートだったり、期中平均レートが使われたり様々ですが、その計算方法を明記しておくことが大事です。
左のグラフだけだと通貨の変動の影響が分かりません。
こういう場合、右のようなグラフが分かりやすくないですか?(2010~12年は円高だなと)
6.海外調査の注意点
特に国内調査との違いについて比較しながら述べていきたいと思います
言語、文化の違い
日本では当たり前となっている文化や習慣などについても、初めてそのレポートを読む日本人がその知識がないことを前提に書いていた方がいいと思います。
例えば、冷凍食品を現地で販売しようと考えている時に、お米を食べる習慣がなければ米類の冷凍食品は売れないという形になります。
また、翻訳のレベルによって解釈が異なる場合があり、場合によっては原文と訳文を併記するという形のほうが読み手にとっては好ましい場合があります。
どちらにしても出所を表すことでわかりやすいレポートになると思います。
客観性・説得力
海外調査について説得力はもちろんですが、客観性というのはとても大切になります。
いろいろなデータソースが存在する場合は別ですが、市場にとってはほとんど情報がない場合もあり、自分が調査したものだけという形になるので、客観性という観点で検証すら難しくなります。
ボリューム
海外調査は、どうしても日本語部分と現地文という形でボリュームが大きくなりがちです。
そのため必ずサマリーや要約は作るようにしましょう。
時間・締め切り
海外調査は金額が大きくなりがちなので、時間も時間管理がとても難しくなります。
予算管理をきっちり行いましょう。